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九頭龍大神(くずりゅうおおかみ)は何の神様?ご利益・伝説と箱根本宮への行き方 | 神様図鑑

九頭龍大神クズリュウは、湖や水源を守り、水の恵みをもたらす龍神です。箱根では金運や良縁を願う神として親しまれ、戸隠では雨乞いや農耕に結びつく信仰が続いています。その伝説とご利益をたどりながら、箱根の九頭龍神社本宮への行き方も紹介します。

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目次

九頭龍大神クズリュウは何の神様?

九頭龍大神クズリュウは、水を司る龍神です。神奈川県の箱根では芦ノ湖の守護神、長野県の戸隠では山と水源を守る地主神として祀られています。地主神とは、その土地を古くから守ってきた神のことです。

箱根には、湖を荒らしていた九つの頭を持つ毒龍が、僧の万巻上人マンガンショウニンの祈りによって鎮まり、守護神になったという伝説があります。現在は、芦ノ湖のほとりにある本宮と、箱根神社境内の新宮に祀られています。

戸隠では、山の水を田畑へ届けてほしいという祈りと深く結びついてきました。中世には神と仏をともに祀る戸隠山顕光寺が栄え、九頭龍クズリュウを祀る堂は山内の信仰の中心でした。近世には農業の守りや災いを避ける祈りが庶民にも広がり、地域の人々や「講」と呼ばれる信仰の仲間によって受け継がれています。

同じ九頭龍クズリュウの名でも、湖や山など、それぞれの土地に伝わる由緒があります。金運や縁結び、雨乞いなど、祈りの内容にも地域の特色が見られます。

九頭龍大神クズリュウの別名・読み方

九頭龍大神クズリュウは「くずりゅうおおかみ」と読みます。「九頭龍クズリュウ」の読みは「くずりゅう」です。戸隠神社や東京都檜原村の九頭龍神社では、「くずりゅうのおおかみ」と「の」を添えた読みが案内されています。

区分名称
神名・親しまれている呼び名九頭龍大神クズリュウ、九頭龍神クズリュウ、九頭龍さまクズリュウサマ
古くからの信仰上の呼び名九頭龍権現クズリュウゴンゲン

九頭龍神クズリュウは「くずりゅうのかみ」、九頭龍権現クズリュウゴンゲンは「くずりゅうごんげん」と読みます。「権現」は、仏が人々を救うために神の姿で現れるという、神と仏を結びつける信仰で使われた呼び名です。檜原の古い地誌にも、九頭龍権現社という社名が記されています。

「龍」と「竜」は字の違いで、九頭竜大神クズリュウという表記も見られます。京都の九頭竜大社が祀る九頭竜弁財天大神クズリュウベンザイテンには独自の由緒があり、箱根の九頭龍大神クズリュウとは信仰の成り立ちが異なります。

九頭龍大神クズリュウの御神格・ご利益・ご神徳

九頭龍大神クズリュウへの信仰は、水の恵みと土地の守護を基礎にしています。箱根では商売繁盛や金運守護、良縁成就が知られ、戸隠では雨や実りを願う祈りが受け継がれています。

九頭龍大神クズリュウの御神格

項目内容
御神格水を司る龍神、芦ノ湖の守護神、戸隠の地主神・水と豊作の神

芦ノ湖は、古く「箱根権現御手洗の池」と呼ばれた神聖な湖です。九頭龍大神クズリュウは、その湖を守り、水の力を司る神として敬われてきました。

戸隠の山は、田畑を潤す水の源でもあります。雨の量が収穫を左右する暮らしの中で、水神への祈りは雨乞いや豊作を願う信仰へと結びつきました。

九頭龍大神クズリュウのご利益・ご神徳

項目内容
ご利益商売繁盛・金運守護・心願成就・良縁成就(箱根)、雨乞い・縁結び・心願成就・歯の健康を願う信仰(戸隠)
ご神徳芦ノ湖の守護、水と豊作の恵み

箱根神社では毎日「九頭龍祈祷」が行われ、金運や良縁をはじめ、学業成就や合格祈願なども受け付けています。湖の守護神への信仰は、仕事や人生の節目に願いを託す祈りにもつながっています。

戸隠の九頭龍社は、古くから「虫歯の神」としても信仰されています。雨や農作物に加え、歯の健康など身近な願いも寄せられてきた神です。ご利益は、こうした各地の信仰で願われているものです。

九頭龍大神クズリュウの家系図・関係する神々

箱根の九頭龍クズリュウ伝説では、父母や配偶神、子の名は語られていません。伝承の中心となるのは、箱根大神ハコネオオカミの神力を受けた万巻上人マンガンショウニンが毒龍を鎮め、芦ノ湖を守る神として祀ったという関係です。

戸隠神社の由緒も、土地を守る神としての役割を伝えています。九頭龍大神クズリュウは、奥社の祭神である天手力雄命アメノタヂカラオが祀られる以前からの地主神とされます。東京都檜原村の九頭龍神社では九頭龍大神クズリュウと天手力男命アメノタヂカラオがともに祀られており、こちらは神社の祭祀を通した結びつきです。

九頭龍大神クズリュウの神話・伝承

箱根の九頭龍クズリュウ伝説は、荒れ狂う龍が万巻上人マンガンショウニンの祈りによって鎮まり、芦ノ湖の守護神になる話です。箱根神社に伝わる『筥根山縁起并序ハコネサンノエンギナラビニジョ』には、龍が降伏を願い、宝を差し出す場面が記されています。

荒れる湖から、守りの湖へ

以下は、原典で確認できる出来事をもとに、現代の読み物として意訳・再構成しています。原文の逐語訳ではありません。

波が岸の石をたたき、万巻マンガンの顔へしぶきを浴びせた。目をぬぐう間にも、黒い水面が盛り上がる。そこから九つの頭が現れ、濡れた首をゆっくりともたげた。

芦ノ湖に棲む毒龍だ。身を揺らすたびに波が走り、岸へ押し寄せる。湖の西を行き来する人々は、この龍のために幾度も損害を受けていた。

万巻マンガンは深い淵に臨む場所へ石の壇を築いた。足元の石を踏みしめ、龍を見上げる。これほど近くで見るその姿に喉がこわばったが、後ろへ引きかけた足を止め、壇の上に腰を据えた。

声を出すと、最初の一息が風にさらわれた。万巻マンガンは息を吸い直し、祈りの言葉を重ねる。波音にかき消されても、言葉を途切れさせなかった。

龍は頭を高く上げた。岸には、どうしても退こうとしない人影がある。身を振って波を立てても、しばらくすると、その声がまた耳へ届いた。

万巻マンガンは濡れた衣の冷たさも忘れて祈った。息を継いだとき、龍がこちらを見下ろしたまま動きを止めていることに気づく。もう一度声を響かせると、九つの頭が、ゆっくりと低くなっていった。

龍は姿を変え、万巻マンガンの前へ進み出た。宝珠と錫杖シャクジョウ、それに水瓶スイヘイを差し出す。その口はわずかに開いたが、すぐには言葉が出なかった。

「どうか、降伏を受け入れてほしい」

万巻マンガンは差し出された宝を見て、龍へ視線を戻した。先ほどまで岸を圧するようだった相手が、今は静かに返事を待っている。万巻マンガンはその前で祈りを唱え、鉄の鎖を取った。

龍をつないだのは、栴檀訶羅木センダンキャラノキという木だった。鎖が張ると、龍は一度だけ身を引き、そのまま動かなくなった。万巻マンガンの耳に、岸を打つ波の音が戻ってきた。

足元へ寄せる水は、もう石をのみ込む勢いを持っていなかった。万巻マンガンは握っていた手をほどき、深く息を吐いた。人々を脅かした龍は、芦ノ湖を守る九頭龍大神クズリュウとして祀られた。

湖の水が岸を洗い、ゆっくりと戻っていく。万巻マンガンはしばらく、その音を聞いていた。

戸隠には、学問行者ガクモンギョウジャと九頭一尾の龍が登場する別の伝承があります。『阿裟縛抄アサバショウ』に収められた戸隠寺の話では、岩屋で法華経を唱える行者のもとへ龍が現れ、教えを聞いて悟りを得たいと願います。行者は龍をもとの岩屋へ帰して戸を封じ、その場所に戸隠寺が建立されたと伝えられています。

⇒【長野市誌】戸隠寺の開山伝承の解説はこちら

九頭龍大神クズリュウゆかりの神社・祀られている神社

九頭龍大神クズリュウの信仰は、箱根の湖畔、戸隠の山、檜原の渓谷など、水と関わりの深い土地で受け継がれています。湖に供え物を捧げる神事や、地域の芸能を奉納する祭りなど、現在の祭祀にもそれぞれの土地の特色があります。

九頭龍神社本宮(神奈川県箱根町)と行き方

芦ノ湖畔の「箱根九頭龍の森」に鎮座し、九頭龍大神クズリュウを祀る神社です。毎月13日の月次祭と6月13日の例祭では、社殿での祭典に続いて湖水神事が行われます。米・酒・するめ・卵をそれぞれ九度に分けて湖へ供え、龍神の恵みに感謝する祭りです。参拝者が卵や酒などを自由に湖へ投げ入れることは、自然環境保護のため禁じられています。

普段の参拝は、湖畔の遊歩道を歩く方法と、有料モーターボートを利用する方法があります。徒歩なら、ザ・プリンス箱根芦ノ湖の横から遊歩道を進み、約20分で森の入口へ、受付を通ってさらに約10分で本宮に着きます。湖尻側から森の入口へ向かう遊歩道もあります。

遊歩道への一般車両の乗り入れはできません。車で訪れる場合は、ザ・プリンス箱根芦ノ湖の有料駐車場などを利用して歩きます。モーターボートは、箱根園桟橋や箱根ホテル桟橋から利用できます。

森の通常営業時間は9時〜17時、最終入場は16時30分です。入園料は大人600円、4歳〜小学生300円で、支払いは現金のみです。毎月13日など祭典日の午前は参拝者に限って無料となり、モーターボートで参拝する場合も森の入場料はかかりません。船の料金は別に必要です。

毎月13日の月次祭には、元箱根港から有料の参拝船が運航されます。営業時間や船の運航は季節・天候などによって変わることがあるため、出発前に神社と施設の案内を確認してください。九頭龍神社の御神印は、本宮ではなく箱根神社で受けられます。

⇒九頭龍神社公式サイトはこちら

戸隠神社 九頭龍社(長野県長野市)

戸隠神社を構成する五社の一つで、奥社の隣に九頭龍大神クズリュウを祀っています。鎮座の年代は明らかではありませんが、天手力雄命アメノタヂカラオが祀られる以前からの地主神と伝えられています。

戸隠山が神と仏をともに祀る霊場だった時代、この神を祀る堂は「本院権現堂」や「御祭所」と呼ばれ、山内の信仰の中心にありました。現在は奥社と共通する参道を歩いて向かいます。道の中ほどには茅葺きの随神門があり、その先には樹齢約400年の杉並木が続いています。

⇒戸隠神社公式サイトはこちら

九頭龍神社(東京都檜原村)

秋川渓谷の上流、数馬に鎮座し、九頭龍大神クズリュウと天手力男命アメノタヂカラオを祀っています。正確な創建年は分かっていませんが、社伝では、南朝方として戦った中村家が武運を祈る氏神として祀ったのが始まりとされます。中村家は代々、神職を務めてきました。

例祭は例年9月の第2日曜日に行われ、太神楽や三匹獅子、ばか面囃子などの民俗芸能が奉納されます。神社から奥多摩方面へ約150メートル進むと、九頭龍の滝へ向かう遊歩道の入口があります。二段に流れ落ちる滝は、禊の行場としても使われています。

⇒九頭龍神社公式サイトはこちら

九頭龍大神クズリュウが祀られている主な神社

代表として紹介した三社のほか、箱根神社境内の新宮でも九頭龍大神クズリュウにお参りできます。

神社名住所
九頭龍神社新宮神奈川県足柄下郡箱根町

新宮は、本宮へ向かうことが難しい人も参拝しやすい社として、2000年の元日に建立されました。毎月15日に月次祭が行われ、7月31日の湖水祭も新宮での祭儀から始まります。箱根神社にお参りする際に、あわせて立ち寄れる場所です。

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