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菊理媛神(くくりひめのかみ)は何の神様?正体・ご利益と白山の神社めぐり | 神様図鑑

菊理媛神ククリヒメは、人と人との仲を取り持つ縁結び・和合の女神です。白山の女神としても広く祀られ、山から流れる水や、暮らしを支える恵みへの祈りと結びついています。神話に残された短い登場場面から、信仰の広がり、ご利益、参拝できる神社まで紹介します。

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目次

菊理媛神ククリヒメは何の神様?正体と白山信仰

菊理媛神ククリヒメは、神々の間を取り持つ仲介の神として知られる女神です。白山信仰では、白山を守る白山比咩大神シラヤマヒメと同じ神として祀られています。

神話に登場するのは、『日本書紀』神代上・第五段の「一書第十」という別伝です。死者の世界である黄泉の国の境で、伊弉諾尊イザナギと伊弉冉尊イザナミが争っているところへ現れ、伊弉諾尊イザナギに言葉を述べます。伊弉諾尊イザナギがそれを聞いてよしとし、立ち去ることは記されていますが、菊理媛神ククリヒメが何を言ったのかは伝えられていません。

「正体が謎」といわれるのは、この登場が短く、生い立ちや家族まで語られないためです。『古事記』には登場せず、『日本書紀』でも詳しい人物像は描かれていません。この言葉を交わす場面が、後世には二神の仲を取り持った話として受け止められ、和合や縁結びの信仰につながりました。

中世以降、菊理媛神ククリヒメは白山の女神と重ねて信仰されるようになります。白山は雪解け水をもたらす山として仰がれ、山へ登って祈る人々や、山麓で暮らす人々の信仰を集めてきました。今日の菊理媛神ククリヒメには、神話に登場する仲介の女神と、山や水の恵みを守る女神という両方の姿があります。

菊理媛神ククリヒメの別名

菊理媛神ククリヒメは「くくりひめのかみ」と読みます。神社では「命」「尊」「大神」などを付けた表記が使われ、「媛」を「姫」と書くこともあります。

区分名称・異表記
『日本書紀』の神名菊理媛神ククリヒメ
神社で用いられる表記菊理媛尊ククリヒメ、菊理媛大神ククリヒメ、菊理姫命ククリヒメ
白山信仰で重ねられる神名白山比咩大神シラヤマヒメ

白山比咩神社は、祭神を「白山比咩大神シラヤマヒメ=菊理媛尊ククリヒメ」と案内しています。白山比咩大神シラヤマヒメは「しらやまひめのおおかみ」と読み、白山の女神としての呼び名です。『日本書紀』の登場場面には、白山との関わりは語られていません。

「くくり」は、ひとつにまとめる「括る」に通じると説明されてきました。乱れた糸をまとめるように人の仲を結ぶ、という神名の解釈が、縁結びの信仰にも重ねられています。

菊理媛神ククリヒメの御神格・ご利益・ご神徳

菊理媛神ククリヒメには、人の縁を結ぶことと、水の恵みや清めをもたらすことへの祈りが寄せられています。縁結び・夫婦円満に加え、白山信仰では農業や日々の暮らしを支える神としても敬われています。

菊理媛神ククリヒメの御神格

項目内容
御神格仲介・和合の神、縁結びの神、白山の女神、水の神

水の神としての信仰には、白山と周囲の土地の関係があります。山に積もった雪は季節とともに解け、川や地下水となって田畑と集落を潤します。石川県の手取川扇状地では、七ヶ用水という用水路が川の水を田畑へ運び、米づくりを支えてきました。

白山を仰ぐ祈りには、その水への感謝とともに、洪水などの自然の力に対する畏れも含まれます。暮らしに欠かせない水をもたらす山の女神として、菊理媛神ククリヒメは豊かな実りと土地の安穏を願う信仰を集めています。

菊理媛神ククリヒメのご利益・ご神徳

項目内容
ご利益縁結び、夫婦円満、家内安全、五穀豊穣、厄除け・災難除け
ご神徳人の仲を取り持つ和合、水の恵みによる暮らしの守護、穢れを祓い清める働き

白山比咩神社は、良縁成就や夫婦円満、五穀豊穣などをご利益として挙げています。神々の仲を取り持つ姿に重ねて夫婦の和合を願い、水の恵みに感謝して作物の豊かな実りを祈る信仰です。

新潟の白山神社では、この「結ぶ」働きを、夫婦や親子、家族のつながり、仕事の縁などにも広げて説明しています。水が心身を清めるという信仰から、厄除けや災難除けの祈願も行われています。神社によって祈願の内容は異なり、良い縁との出会いから、家族の無事や仕事の繁栄まで、さまざまな願いが託されています。

清めの信仰は、白山の水を使う禊にも受け継がれています。禊は、水に身を浸して心身を清める神事です。白山比咩神社には境内に禊場があり、神職の指導のもとで一般の人が参加できる機会も設けられています。

菊理媛神ククリヒメの家系図・関係する神々

『日本書紀』の一書第十には、菊理媛神ククリヒメの父母、配偶神、子、兄弟姉妹は記されていません。生まれた場所や経緯も語られず、黄泉の国の境で言葉を述べる場面に登場します。

神話で深く関わるのは、国生みを行った夫婦神の伊弉諾尊イザナギと伊弉冉尊イザナミです。菊理媛神ククリヒメはこの二神の争いの場に現れますが、二神の子であるという系譜は示されていません。

白山比咩神社では、菊理媛尊ククリヒメとともに伊弉諾尊イザナギ・伊弉冉尊イザナミの三柱が祀られています。新潟の白山神社も同じ三柱を主祭神とし、神話で関わる神々を一緒に祀っています。

菊理媛神ククリヒメの神話・伝承

『日本書紀』神代上・第五段一書第十には、黄泉の国の境で言い争う二神と、そこへ言葉を述べる菊理媛神ククリヒメが描かれます。伊弉諾尊イザナギがその言葉を聞き、立ち去るまでの短い場面です。

別れの坂で、声が届く

以下は、原典で確認できる出来事をもとに、現代の読み物として意訳・再構成しています。原文の逐語訳ではありません。

伊弉諾尊イザナギは、目の前の伊弉冉尊イザナミを見つめたまま、荒い息を吐いた。失った妻が恋しくて、ここまで来たはずだった。それなのに、泉平坂(よもつひらさか)で向き合う二人の間には、責める言葉ばかりが行き来していた。

「お前を悲しみ、哀れんだ。あれは、私の弱さだったのだ」

声に力を込めても、胸の痛みは消えない。伊弉諾尊イザナギは唇を結び、目の前の妻から視線をそらした。言葉を重ねるたびに、かつて一緒にいた日々が遠のいていく。

そこで、黄泉の道を守る者が口を開き、伊弉冉尊イザナミの言葉を取り次いだ。「二人で、すでに国を生んだでしょう。どうして、なお生きることを求めるのです。私はこの国に留まります。一緒には行けません」伊弉諾尊イザナギは返しかけた声をのみ込み、足もとへ目を落とした。

そのとき、菊理媛神ククリヒメの声がした。伊弉諾尊イザナギは顔を上げ、耳を傾ける。その言葉を聞いているうちに、こわばっていた肩から、ゆっくり力が抜けていった。

伊弉諾尊イザナギは、菊理媛神ククリヒメの言葉をよしとしてうなずいた。もう一度息をつくと、身をひるがえして坂を離れる。争う声が途切れたあとには、遠ざかる足音が残った。

⇒【日本神話.com】『日本書紀』神代上・第五段一書第十はこちら

菊理媛神ククリヒメに禁句はある?「怖い」という話と参拝の心得

菊理媛神ククリヒメについて、特定の言葉を口にすると祟られるという決まりは、『日本書紀』には書かれていません。神話で彼女が述べた言葉の内容は残されていませんが、口外を禁じたという記述もありません。

「厳しい神だから怖い」「参拝すると大切な相手と別れる」といった話は、現代のスピリチュアルな解釈でも語られています。新潟の白山神社は、女神がやきもちを焼いてカップルを別れさせるという俗説に対し、菊理媛大神ククリヒメを夫婦円満と縁結びの神として紹介しています。

同社が案内する「縁切り」には、酒・たばこ・賭け事などとの悪縁を断ち、良い縁へ結び直すという意味があります。大切な人との別れを恐れる話とは異なり、自分を苦しめる習慣などから離れ、これからの暮らしを良くしたいと願う信仰です。

菊理姫ククリヒメと「シリウス」を結びつける話もありますが、現代のスピリチュアルな解釈の一つです。『日本書紀』の菊理媛神ククリヒメの場面には、シリウスとの関わりや、宇宙から来たという話は記されていません。

菊理媛神ククリヒメを訪ねる神社めぐり

菊理媛神ククリヒメへの信仰は、白山を中心に各地の神社へ広がっています。加賀・越前・美濃には登拝の拠点「三馬場(さんばんば)」が置かれ、山で修行する人々や農民、都から訪れる人々が、ここから山頂を目指しました。

現在も山麓の登拝拠点から都市の総鎮守まで、地域ごとに異なる祭りや祈りが受け継がれています。白山の名を持つ神社でも祭神は同じとは限らず、菊理媛神ククリヒメを主祭神として祀る社、ほかの神とともに祀る社があります。

白山比咩神社|石川県白山市

白山比咩神社は、白山比咩大神シラヤマヒメとして菊理媛尊ククリヒメを祀る、白山神社の総本宮です。伊弉諾尊イザナギ・伊弉冉尊イザナミも祭神とし、白山登拝の加賀馬場の中心を担ってきました。現在は山麓に本宮、白山山頂に奥宮があります。

本宮は文明12年(1480)の大火後、末社の三宮があった現在地へ移りました。現在の本殿は明和7年(1770)、加賀藩主の前田重教の寄進によるものです。境内には白山奥宮の遥拝所があり、山頂へ登らずに白山へ祈りを捧げられます。神前結婚式も行われ、菊理媛尊ククリヒメの前で夫婦の契りを結びます。

⇒ 白山比咩神社のご利益・属性・見どころを詳しく見る

白山神社|新潟県新潟市中央区

新潟総鎮守の白山神社は、菊理媛大神ククリヒメを伊邪那岐命イザナギ・伊邪那美命イザナミとともに主祭神として祀ります。加賀の白山の神を新潟へ迎えて祀った神社で、水の都・港町に暮らす人々から、地域を守る神として敬われてきました。

創建の詳しい年代は、戦国時代の火災で古い記録が失われたため分かっていません。正保4年(1647)には本殿が完成し、長岡藩主の牧野忠成が能を奉納したことから、祭日に能を奉納する習わしが生まれました。現在は縁結びの祈願のほか、夏越の茅の輪神事や夏まつりも行われます。恋愛や結婚、友人や仕事との良い出会いを願う「結びの絵馬」もあり、願いを書いて奉納できます。

⇒白山神社公式サイトはこちら

白山中居神社|岐阜県郡上市

石徹白の白山中居神社は、菊理媛神ククリヒメを祭神の一柱として祀ります。白山へ向かう参詣道「美濃禅定道」の途中に位置し、山への登拝を支えた地域の信仰を伝える神社です。

春の大祭では、郡上市の重要無形民俗文化財「五段の神楽」が奉納されます。「とびの舞」「二人舞」「鈴の舞」「扇の舞」「幣の舞」の五つからなり、鈴・扇・幣を手にした巫女が舞います。秋の新嘗祭では、新穀で作った餅を藁束に入れた「笥筒(ゲド)」を供え、実りに感謝します。祭りの最後には、神職が参拝者へ笥筒を投げ、縁起物として受け取る習わしもあります。

⇒白山中居神社公式サイトはこちら

菊理媛神ククリヒメが祀られている主な神社

ほかにも、次の神社で菊理媛神ククリヒメを祀っています。藤ノ木白山神社では配神として、芦屋神社では境内の古墳石室にある水神社で祀られています。

神社名住所
白山神社(大阪市城東区)大阪府大阪市城東区
芦屋神社 境内・水神社兵庫県芦屋市
藤ノ木白山神社福岡県北九州市若松区
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