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熊野久須毘命(くまのくすびのみこと)は何の神様?ご利益・誓約の神話・祀られている神社 | 神様図鑑

熊野久須毘命クマノクスビは、天照大御神アマテラスと須佐之男命スサノオの誓約から生まれた五柱の男神の一柱です。天照大御神アマテラスの御子として語られ、神社では海上安全や地域の繁栄を願う信仰に結びついています。誓約での誕生、似た名前を持つ熊野の神々との関係、現在祀られている神社を紹介します。

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目次

熊野久須毘命クマノクスビは何の神様?

熊野久須毘命クマノクスビは、天照大御神アマテラスの御子であり、誓約で最後に生まれた男神です。地域の神社では、港の安全や暮らしの繁栄を守る神として祀られています。

誓約とは、神聖な行いの結果によって心の真実などを確かめることです。『古事記』では、須佐之男命スサノオが姉の国を奪おうとしているのではないかと疑われたため、二柱が子を生む誓約を行いました。熊野久須毘命クマノクスビはそのとき、天照大御神アマテラスが右手に巻いていた珠から生まれます。

「久須毘」の「久須」は不思議な力を表す「奇し」、「毘」は神霊を意味するという説があります。「熊野」には、地名に結びつける説のほか、奥まった野や神への供え物を指すとする説もあります。

神話に記される中心的な出来事は、この誕生です。現在の祭祀では、熊野の神々とともに祀る神社や、誓約で生まれた八柱を祀る八王子神社などで信仰が受け継がれています。

熊野久須毘命クマノクスビの別名・読み方

熊野久須毘命クマノクスビは「くまのくすびのみこと」と読みます。『日本書紀』には、次のような異なる名前も記されています。

区分 別名・異表記
『古事記』の神名・異表記 熊野久須毘命クマノクスビ、熊野久湏毗命クマノクスビ
『日本書紀』の神名 熊野櫲樟日命クマノクスビ、熊野忍蹈命クマノオシホミ、熊野忍隅命クマノオシクマ、熊野大角命クマノオオクマ

『日本書紀』の誓約を語る本文では熊野櫲樟日命クマノクスビといい、異伝には熊野忍蹈命クマノオシホミや熊野忍隅命クマノオシクマという名が現れます。熊野大角命クマノオオクマは、別の段に収められた異伝の神名です。

また、「熊野久須美大神クマノクスミ」と、岐阜県揖斐川町春日六合の熊野神社の祭神名として祀られています。同社では家津御子神ケツミコ、御子速玉大神ミコハヤタマとともに祀られています。ただし、この名が誓約の熊野久須毘命クマノクスビを指すかどうかは、はっきりしません。

熊野の神々の結びつけ方は、神社によっても異なります。兵庫県三木市の大宮八幡宮は熊野久須毘命クマノクスビを熊野夫須美神クマノフスミとも呼びますが、神奈川県茅ヶ崎市の熊野神社では熊野久須毘命クマノクスビと熊野夫須美命クマノフスミを別々の祭神として祀っています。

熊野久須毘命クマノクスビの御神格・ご利益・ご神徳

熊野久須毘命クマノクスビには、海上安全や郷土の繁栄を願う信仰があります。熊野の神として万物の生成や和合を司り、縁結びや産業の守護に結びつける神社もあります。

熊野久須毘命クマノクスビの御神格

項目 内容
御神格 天照大御神アマテラスの御子、港・海上の守護神、生成・和合の神(大宮八幡宮の信仰)

愛媛県今治市の楠神社では、熊野久須毘命クマノクスビを港の守護神として祀っています。人や物が行き交う港では、船の無事と地域の暮らしが深く結びついていました。楠神社に伝わる海上安全と郷土繁栄の神徳は、この港を守る信仰に根ざしています。

兵庫県三木市の大宮八幡宮では、熊野夫須美神クマノフスミとも呼び、あらゆるものを生み出し、結び合わせる神として敬われています。

熊野久須毘命クマノクスビのご利益・ご神徳

項目 内容
ご利益 海上安全、郷土繁栄(楠神社)、縁結び・農林水産業の守護(大宮八幡宮)
ご神徳 港と地域の暮らしを守る働き、万物を生み出し和合させる働き(神社ごとの信仰)

大宮八幡宮で伝えられる縁結びは、物事を結び合わせる和合の働きとつながっています。同社は農林業や水産・漁業の神ともしており、人の縁とともに日々の生業を支える恵みも願われています。

茅ヶ崎市の熊野神社では、熊野久須毘命クマノクスビを含む熊野の神々に、海上の無事や漁業の守護、交通安全、厄難除け、家内安全などを祈ります。これらは、複数の祭神を祀る神社全体に伝わるご利益です。

熊野久須毘命クマノクスビの家系図・関係する神々

『古事記』では、熊野久須毘命クマノクスビは天照大御神アマテラスの子とされます。実際に珠を噛み、息の霧から生み出したのは須佐之男命スサノオですが、そのもとになった珠が天照大御神アマテラスの持ち物だったため、天照大御神アマテラスが自分の子と定めました。

関係 神名・説明
母にあたる親神 天照大御神アマテラス。自分の珠から生まれた五柱を「我が子」としました
兄弟神 天忍穂耳命アメノオシホミミ、天之菩卑能命アメノホヒ、天津日子根命アマツヒコネ、活津彦根命イクツヒコネ。熊野久須毘命クマノクスビとともに、天照大御神アマテラスの子とされた五男神です

活津彦根命イクツヒコネは『古事記』では活津日子根命イクツヒコネと記され、天照大御神アマテラスの左手の珠から第四の男神として生まれます。それに続く第五の男神が、右手の珠から生まれた熊野久須毘命クマノクスビです。熊野久須毘命クマノクスビの配偶神や子については、この誕生を語る『古事記』の段に記されていません。

市杵島姫命イチキシマヒメも同じ誓約で生まれた神ですが、三柱の女神の一柱です。『古事記』では、天照大御神アマテラスが須佐之男命スサノオの剣から生み出し、剣の持ち主である須佐之男命スサノオの子とされています。五男神と三女神は、合わせて八柱の神として祀られることもあります。

熊野久須毘命クマノクスビの神話・伝承

天照大御神アマテラスと須佐之男命スサノオの誓約では、剣から三柱の女神、珠から五柱の男神が生まれます。熊野久須毘命クマノクスビは、最後の珠から現れた神です。ここでは『古事記』に記された誕生の場面を描きます。

最後の珠から生まれた第五の神

以下は、原典で確認できる出来事をもとに、現代の読み物として意訳・再構成しています。原文の逐語訳ではありません。

川の向こうに立つ弟から、天照大御神アマテラスは目を離さなかった。弓を握る指に力が入り、腕に巻いた珠が小さく触れ合う。山川を揺らして上ってきた須佐之男命スサノオを前に、挨拶だけだという言葉を、すぐに信じることはできなかった。

「邪心がないというのなら、その心をどうやって確かめればよいのです」

問いを受けた須佐之男命スサノオは、姉の視線を正面から受け止めた。「互いに誓約をして、子を生みましょう」。言葉が途切れると、二柱の間を流れる天安河の音が戻ってきた。

天照大御神アマテラスは、弟の腰にある剣を求めた。受け取った十拳剣を三つに折り、天之真名井の水ですすぐ。噛み砕いて息を吐くと、白い霧が広がり、その中から三柱の女神が姿を現した。

目の前で起きたことを見届け、天照大御神アマテラスは弟へ視線を戻した。今度は、こちらの珠を求めている。弓を握っていた手をゆるめ、身につけた珠へ指を伸ばした。

須佐之男命スサノオは受け取った珠を水ですすいだ。姉が見守る前で噛み砕き、息を吹き出す。その後も珠を受け取り、息の霧から一柱、また一柱と男神を生み出していった。

四柱の男神が生まれたとき、天照大御神アマテラスは自分の右手へ目を落とした。そこには、まだ珠が巻かれている。これも渡せば、また新たな神が生まれるのだろうか。

天照大御神アマテラスは珠の緒に指をかけ、ゆっくりほどいた。さっきまで腕に触れていた珠が、弟の手へ移っていく。須佐之男命スサノオはその珠を噛み砕き、深く息を吹き出した。

立ちのぼる霧の向こうに、もう一柱の神が現れた。熊野久須毘命クマノクスビだった。天照大御神アマテラスは息をのみ、珠のなくなった右手をそっと開いた。

空になった右手へ川風が触れた。天照大御神アマテラスは、その手と五柱の神々を見比べた。弟が生み出した神々の始まりは、確かに自分が身につけていた珠だった。

天照大御神アマテラスは顔を上げた。弟の真意を見極めようと張りつめていた声に、今は別の強さがあった。五柱を見据え、はっきりと告げる。

「この五柱は、私の珠から生まれた。私の子です。先に生まれた三柱の女神は、あなたの剣から生まれた、あなたの子です」

言い終えた天照大御神アマテラスの前に、熊野久須毘命クマノクスビを加えた五柱の御子がいた。

熊野久須毘命クマノクスビを祀る神社・熊野大社との関係

熊野久須毘命クマノクスビは、熊野の神々を祀る神社や、誓約で生まれた八柱を祀る神社などで信仰されています。港の守護神として祀る社もあれば、地域の鎮守として受け継がれてきた社もあります。

島根県松江市の熊野大社は、素戔嗚尊スサノオの別名とされる神祖熊野大神櫛御気野命クシミケヌを主祭神としています。熊野久須毘命クマノクスビと同じ神とする説もありますが、名前や親神の違いから、別の神とする説もあります。

山形県南陽市の熊野大社は、本殿に伊弉冉尊イザナミの別名である熊野夫須美大神クマノフスミを祀ります。二宮には伊弉諾尊イザナギにあたる熊野速玉大神クマノハヤタマを祀り、素盞鳴尊スサノオにあたる熊野家津御子大神クマノケツミコも主な祭神の一柱です。

楠神社|愛媛県今治市

楠神社は、今治市湊町二丁目に鎮座し、熊野久須毘命クマノクスビを主祭神として祀ります。この地域はかつて越智国府の重要な港であり、神社は港を守る社として奉斎されました。

由緒では、熊野権現が信仰された時代に、「熊野」という名の音のつながりから熊野久須毘命クマノクスビを祀ったと伝えています。例大祭は5月の第2日曜日に行われます。

⇒【愛媛県神社庁】楠神社の紹介はこちら

熊野神社|神奈川県茅ヶ崎市小和田

小和田の熊野神社では、熊野久須毘命クマノクスビを、熊野夫須美命クマノフスミ、速玉男命ハヤタマノオ、家津御子命ケツミコとともに祀っています。創建の時期は分かっていませんが、元禄元年(1688年)の再建を伝える棟札があり、小和田村の鎮守として記されています。

その後も弘化・明治・大正の再築を示す棟札が残り、地域の人々に受け継がれてきました。1月には豊漁祭、7月の海の日には浜降祭、8月には例大祭が行われます。初宮詣や七五三など、子どもの成長や家族の節目にも参拝される神社です。

⇒【神奈川県神社庁】熊野神社の紹介はこちら

大宮八幡宮|兵庫県三木市

三木市の大宮八幡宮は、応神天皇オウジンテンノウを主祭神とし、熊野久須毘命クマノクスビを含めて九柱の神々を本殿に祀っています。熊野久須毘命クマノクスビは「熊野大神クマノノオオカミ」として奉斎されています。

社伝では、天永2年(1111年)に社殿を遷したと伝えています。平成6年(1994年)には本殿を後方へ移し、その前に両翼殿を備えた拝殿を建てる大造営が行われました。現在も例大祭にあたる秋祭りなどの祭事が受け継がれています。

⇒大宮八幡宮公式サイトはこちら

熊野久須毘命クマノクスビが祀られている主な神社

次の神社でも、熊野久須毘命クマノクスビが祭神として祀られています。熊野八幡神社は昭和57年(1982年)に熊野神社と八幡神社が合併して成立した社です。妻木町の八王子神社は誓約の五男神・三女神を祀り、古くから山寺区の人々に崇敬されてきました。

神社名 住所
熊野八幡神社 岐阜県各務原市
八王子神社(妻木町) 岐阜県土岐市
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