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天忍穂耳命(あめのおしほみみのみこと)は何の神様?稲穂と勝運のご利益・神話・祀る神社 | 神様図鑑

天忍穂耳命アメノオシホミミは、稲穂の実りを守る農業の神であり、勝運の神としても信仰されています。天照大御神アマテラスの御子で、天孫降臨の主人公・邇邇芸命ニニギの父にあたる神です。その誕生と家族、地上を治める役目を子に託した神話、出雲大社との関係や各地の神社を紹介します。

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目次

天忍穂耳命アメノオシホミミは何の神様?

天忍穂耳命アメノオシホミミは、稲穂に宿る力を神格化した神とされ、五穀豊穣や農業の守護を願って祀られる男神です。天照大御神アマテラスの子として天上の世界・高天原に現れ、皇室の祖先につながる神としても位置づけられています。

『古事記』では、地上の葦原中国を治めるよう、最初に天照大御神アマテラスから命じられます。しかし、天と地をつなぐ天浮橋から下界を見たとき、国がひどく騒いでいると告げて高天原へ戻りました。この報告の後、地上の神々に国を譲るよう求める使者が遣わされます。

国譲りが済むと、天忍穂耳命アメノオシホミミは再び地上へ向かうよう命じられます。そのとき、自分が支度をしている間に生まれた邇邇芸命ニニギを推薦し、降臨の役目を託しました。天照大御神アマテラスの御子から孫へと、地上を治める神が交代する場面に登場します。

現在の信仰には、田畑の実りを祈る農耕の祭りと、勝利や産業の安全を願う祈りがあります。神の宿る山を仰ぐ山岳信仰とも結びつき、神話の系譜と地域の暮らしの両方で受け継がれてきました。

天忍穂耳命アメノオシホミミの別名

天忍穂耳命アメノオシホミミは「あめのおしほみみのみこと」と読みます。『古事記』『日本書紀』には、勝利を表す言葉を重ねた長い神名でも登場します。

区分別名・異表記
短い呼び名・祭神表記天之忍穂耳命アメノオシホミミ、天忍穂耳尊アメノオシホミミ
『古事記』に見える表記正勝吾勝勝速日天之忍穂耳命アメノオシホミミ、正勝吾勝勝速日天忍穂耳命アメノオシホミミ
『日本書紀』に見える表記正哉吾勝勝速日天忍穂耳尊アメノオシホミミ

長い名前の前半は、勝ったことや、その勝利の勢いをたたえる言葉です。『古事記』の「正勝」は「まさかつ」、『日本書紀』の「正哉」は「まさか」と読む形が知られています。「正勝吾勝勝速日」は「まさかつあかつかちはやひ」と続きます。

後半の「忍穂」は、たくさんの稲穂や、力強い稲穂の神霊を表すと解釈されています。「耳」は神をたたえる尊称とされ、稲の実りに宿る力と、勝利を表す呼び名をあわせ持つ神名です。

天忍穂耳命アメノオシホミミの御神格・ご利益・ご神徳

天忍穂耳命アメノオシホミミへの祈りでは、五穀豊穣と勝運が中心になります。英彦山神宮では、農業に加え、鉱山や工場で働く人々の安全も守る神として信仰されています。

天忍穂耳命アメノオシホミミの御神格

項目内容
御神格稲穂の神、農業の守護神、勝運の神、皇室の祖先につながる神

泉穴師神社では天忍穂耳尊アメノオシホミミを農業の神、妻の栲幡千々姫命タクハタチヂヒメを織物の神として祀り、食べ物と衣服を支える夫婦の神として敬っています。

勝運の信仰がよく知られるのは、滋賀県の太郎坊宮です。勝利をたたえる神名にちなみ、勝利と幸福を授ける神として祈りを集めています。

天忍穂耳命アメノオシホミミのご利益・ご神徳

項目内容
ご利益五穀豊穣、勝運、産業安全(英彦山神宮)
ご神徳稲の実りと農業を守る働き、勝利と幸福を授ける働き、鉱山・工場の安全の守護(英彦山神宮)

豊作への願いは、春の田植えと秋の収穫を節目とする祭りにも受け継がれています。太郎坊宮では、初夏のお田植大祭で五穀豊穣と諸産業の発展を祈り、秋の抜穂祭で実った稲穂を神前に供えます。稲の神への祈りは、収穫を願い、得られた恵みに感謝する営みと結びついています。

英彦山神宮には、春と夏の産業安全祈願大祭、秋の産業安全感謝大祭があります。田畑の生産を守る信仰とともに、鉱山や工場の安全を願う信仰が続いています。

天忍穂耳命アメノオシホミミの家系図・関係する神々

『古事記』の系譜では、天忍穂耳命アメノオシホミミの母神は天照大御神アマテラス、妻は萬幡豊秋津師比売命ヨロズハタトヨアキツシヒメです。二柱の間に天火明命アメノホアカリと邇邇芸命ニニギが生まれます。

関係神名・説明
母(親神)天照大御神アマテラス。誓約で生まれた五柱の男神を、自分の子と定めました。
妻(配偶神)萬幡豊秋津師比売命ヨロズハタトヨアキツシヒメ。高木神タカキの娘です。
子天火明命アメノホアカリ、邇邇芸命ニニギ。『古事記』では、この順に二柱の名が記されます。
兄弟天之菩卑能命アメノホヒ、天津日子根命アマツヒコネ、活津日子根命イクツヒコネ、熊野久須毘命クマノクスビ。ともに天照大御神アマテラスの子とされる四柱です。

天忍穂耳命アメノオシホミミの誕生は、天照大御神アマテラスと須佐之男命スサノオが誓約(うけい)を行う場面で語られます。ここでの誓約は、生まれてくる神を通じて、須佐之男命スサノオの心の潔白を確かめようとした儀式です。須佐之男命スサノオは、天照大御神アマテラスが左右に結った髪のうち、左側の「みづら」に巻いていた玉を受け取りました。

その玉を天上の泉・天之真名井(あめのまない)ですすいで噛むと、吐き出した息の霧から天忍穂耳命アメノオシホミミが生まれます。その後、天照大御神アマテラスのほかの玉からも、四柱の男神が生まれました。

天照大御神アマテラスは、もとの玉が自分の持ち物であることを理由に、五柱を自分の子と定めました。玉を噛んで神を生み出す役割を担ったのは須佐之男命スサノオですが、『古事記』では玉の持ち主である天照大御神アマテラスが親神となります。

妻の萬幡豊秋津師比売命ヨロズハタトヨアキツシヒメは、栲幡千々姫命タクハタチヂヒメの名でも知られる女神です。その父にあたる高木神タカキは、高御産巣日神タカミムスヒの別名です。邇邇芸命ニニギは父方で天照大御神アマテラス、母方で高木神タカキの孫にあたり、地上への降臨に際して、この二柱から命令を受けます。

天忍穂耳命アメノオシホミミの神話・伝承

『古事記』では、地上の国譲りが済んだ後、天忍穂耳命アメノオシホミミに再び降臨が命じられます。その役目を子の邇邇芸命ニニギへ託す場面を描きます。

天から降りるのは、この子だ

以下は、原典で確認できる出来事をもとに、現代の読み物として意訳・再構成しています。原文の逐語訳ではありません。

結びかけた衣の紐が、指の間で止まった。すぐそばから、小さな声が聞こえる。天忍穂耳命アメノオシホミミが振り向くと、生まれたばかりの邇邇芸命ニニギが、布の中で手を動かしていた。

地上へ向かう支度は進んでいた。自分に託された国へ降り、そこを治める。そのために整えていた衣なのに、天忍穂耳命アメノオシホミミの目は、何度も幼い子へ戻ってしまう。

萬幡豊秋津師比売命ヨロズハタトヨアキツシヒメとの間に生まれた、小さな命だった。指先を近づけると、子の手が触れた。その温かさに、天忍穂耳命アメノオシホミミの頬がゆるんだ。

天照大御神アマテラスと高木神タカキから、新たな命令が届いた。葦原中国の平定が終わったという。以前に委ねられたとおり、地上へ降りて治めよ、と。

いよいよだ。衣の紐を結び直しながら、天忍穂耳命アメノオシホミミは言葉を探した。下るべき道が開いた今、胸に浮かぶのは、自分の名よりも、この子の名だった。

天忍穂耳命アメノオシホミミは顔を上げたが、すぐには声が出なかった。自分に与えられた大きな役目を、この子に任せたいと願い出るのだ。それでも、告げるべき名はもう決まっていた。

「降りる支度をしている間に、私には子が生まれた。邇邇芸命ニニギという子だ。この子を、地上へ降ろしていただきたい」

声が途切れ、辺りが静かになった。天忍穂耳命アメノオシホミミは返事を待ちながら、子を見た。邇邇芸命ニニギの小さな胸が、呼吸に合わせて上下している。

その申し出は受け入れられた。天照大御神アマテラスと高木神タカキの命令が、邇邇芸命ニニギへ向けられる。豊葦原水穂国を治めよ、命じたとおりに天降れ、と。

天忍穂耳命アメノオシホミミは、子の名が呼ばれるのを静かに聞いた。さっきまで手に残っていた温かさを思い出し、肩からゆっくり力を抜く。地上へ向かうのは、邇邇芸命ニニギだ。自分で口にしたその名を、今度は胸の内で、もう一度呼んだ。

⇒【國學院大學 古典文化学事業】『古事記』天孫降臨①はこちら

天忍穂耳命アメノオシホミミを祀る神社・出雲大社との関係

天忍穂耳命アメノオシホミミは、九州や近畿をはじめ各地で祀られています。山を神の居場所と仰ぐ信仰、農耕と衣食を支える祈り、勝運を願う参拝など、神社ごとに異なる姿で親しまれています。

天忍穂耳命アメノオシホミミと出雲大社のつながりは、国譲りの神話と弟神の系譜にあります。国譲りは、天照大御神アマテラスが天忍穂耳命アメノオシホミミに地上の統治を託したことから始まる物語です。出雲大社の御本殿に祀られるのは、その地上の国を譲った大国主大神オオクニヌシです。

また、境内の氏社(北)には、天忍穂耳命アメノオシホミミの弟にあたる天穂日命アメノホヒが祀られています。天之菩卑能命アメノホヒとも表記されるこの神は、出雲大社の祭祀を受け継ぐ出雲國造家の祖神です。

⇒出雲大社公式サイトはこちら

英彦山神宮(福岡県添田町)

英彦山神宮は、正勝吾勝勝速日天之忍穂耳命アメノオシホミミを主祭神とする神社です。天照大御神アマテラスの御子を祀ることから、山はもともと「日の子の山」、すなわち「日子山」と呼ばれたと伝えられます。

中世には神仏が結びついた修験道の霊場として栄え、山伏たちの活動を通じて九州各地に信仰が広がりました。現在の奉幣殿は、修験道時代の霊仙寺の大講堂を受け継ぐ建物です。神宮の由緒には、天忍穂耳命アメノオシホミミが鷹の姿で東から現れたという伝承も残っています。

毎年3月15日の祈年御田祭では、境内を田に見立て、鍬入れや種まき、田植えなどの所作を演じて豊作を祈ります。福岡・佐賀・大分などから参拝した人々が札を持ち帰り、家の神前に供えて豊作を願う習わしも続いています。

⇒英彦山神宮公式サイトはこちら

太郎坊宮・阿賀神社(滋賀県東近江市)

太郎坊宮は、赤神山に鎮座し、正哉吾勝勝速日天忍穂耳大神アメノオシホミミを祀る神社です。勝利をたたえる長い神名にちなみ、勝運を願う人々の崇敬を集めています。正式名は阿賀神社で、「太郎坊」はこの神社を守ると伝えられる天狗の名前です。

本殿の前にある夫婦岩は、神が自らの居場所を求め、大岩を二つに割って通った跡と伝えられます。参拝者はこの岩の間を抜けて本殿へ進み、山や巨岩を神聖な場所とする信仰に触れます。12月のお火焚大祭では、大護摩の炎に願いを託す祭りが行われます。

⇒太郎坊宮公式サイトはこちら

泉穴師神社(大阪府泉大津市)

泉穴師神社は、天忍穂耳尊アメノオシホミミと栲幡千々姫命タクハタチヂヒメを夫婦の主祭神として祀る、和泉五社の一社です。農業と紡織が盛んだった泉州で、食と衣を支える神として信仰されてきました。

延喜式の神名帳に載る古社で、泉州二ノ宮とも呼ばれます。本殿と摂社の春日神社・住吉神社の本殿は国の重要文化財に指定され、歴史ある社殿が残っています。現在も夫婦円満や家内安全などを願う参拝があり、幼児の虫封じでも親しまれています。

⇒泉穴師神社公式サイトはこちら

天忍穂耳命アメノオシホミミが祀られている主な神社

代表三社のほかにも、家族の神々とともに祀る神社や、誓約で生まれた五男神の一柱として祀る神社があります。

神社名住所
伊豆山神社静岡県熱海市
須賀神社東京都新宿区
久多美神社島根県出雲市
新田神社鹿児島県薩摩川内市

伊豆山神社では祭神を「伊豆山大神イズサンノオオカミ」と称しています。熱海市は、その祭神として天忍穂耳尊アメノオシホミミ・拷幡千千姫尊タクハタチヂヒメ・瓊瓊杵尊ニニギの三柱を挙げています。新田神社では、子の瓊瓊杵尊ニニギを中心に、天忍穂耳命アメノオシホミミと天照大御神アマテラスをあわせて祀っています。

⇒ 伊豆山神社のご利益・属性・見どころを詳しく見る

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