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天八意思兼命(あめのやごころおもいかねのみこと)は何の神様?知恵の神のご利益・神話・東京と関西の神社 | 神様図鑑

天八意思兼命オモイカネは、神々が困ったときに解決の手立てを考える、知恵の神様です。天照大御神アマテラスが天岩戸に隠れた際には、再び外へ出ていただくための方法を考えました。現在は学業成就や仕事の発展を願う神として親しまれ、東京では天気の祈願とも結びついています。

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目次

天八意思兼命オモイカネはどんな神様?

天八意思兼命オモイカネは、多くの考えをまとめ、物事を進める知恵を授ける神様です。『古事記』では思金神オモイカネと呼ばれ、天照大御神アマテラスや高御産巣日神タカミムスヒから相談を受ける神として登場します。

天岩戸の神話では、暗くなった世界に光を取り戻すため、神々が行う祭りの手立てを考えます。鏡を作る神、祈りの言葉を述べる神、舞う神などが力を合わせる中で、解決策を考える役割を担いました。

地上の国を天つ神に譲る「国譲り」でも、派遣する神を選ぶ相談に加わっています。使者を送ってもうまく進まない状況で、神々と協議し、次の手を考える役割です。天照大御神アマテラスの孫が地上へ降りる「天孫降臨」にも登場し、祭りや政務に関わる働きを託されます。

こうした神話を背景に、学問や判断に関わる知恵の神として敬われてきました。地域によっては土地を治めた氏族の祖神として祀られ、現在も学業、商売、開運など、暮らしのさまざまな願いを寄せられています。

天八意思兼命オモイカネの別名

天八意思兼命オモイカネの読み方は「あめのやごころおもいかねのみこと」です。「思金オモイカネ」と「思兼オモイカネ」はどちらも「おもいかね」と読み、文献や神社によって次のような名前が使われています。

区分 別名・異表記
『古事記』の表記 思金神オモイカネ、常世思金神トコヨノオモイカネ
『日本書紀』などの表記 思兼神オモイカネ
『先代旧事本紀』や神社の呼び名 八意思兼神ヤゴコロオモイカネ、八意思兼命ヤゴコロオモイカネ、天八意思兼命オモイカネ

「思兼オモイカネ」という名は、多くの思慮を兼ね備える神という意味に解釈されます。「八意」の「八」も、多くの知恵を表す言葉です。『古事記』の天孫降臨では常世思金神トコヨノオモイカネという名も現れ、「常世」には遠い先まで考えるという意味を読む説があります。

インド神話に登場する象の頭を持つ神、ガネーシャと同一神として見られることもありますが、天八意思兼命オモイカネとは別の神様です。日本の仏教では、ガネーシャに由来する歓喜天カンギテン、別名・聖天ショウテンの信仰が受け継がれています。

天八意思兼命オモイカネの御神格・ご利益・ご神徳

天八意思兼命オモイカネは、学びや仕事に知恵を授ける神として仰がれています。学業成就や開運のほか、厄除や家内安全を祈る信仰もあり、祀る神社によって願いの内容に特色があります。

天八意思兼命オモイカネの御神格

項目 内容
御神格 知恵・思慮の神、学問の神、祭祀・政治に関わる神

『日本書紀』でも、思兼神オモイカネは深く策を練り、先のことまで考える神として描かれています。祭りの方法を整えたり、派遣する使者を選んだりする働きから、祭祀や政治にも関わる神とされています。秩父神社では、政治・学問・工業・開運の祖神として仰がれています。

東京の気象神社では、太陽の光を取り戻す手立てを考えた神話にちなみ、気象の神としても信仰されています。同社では晴・曇・雨・雪・雷・風・霜・霧の八つを司るとされ、この信仰が天気に関わる祈りへつながっています。

天八意思兼命オモイカネのご利益・ご神徳

項目 内容
ご利益 学業成就、試験合格、商売繁盛、開運、厄除、家内安全、晴天祈願(気象神社)
ご神徳 知恵を授ける働き、物事を進めるための思慮、学びや仕事の守護、災いを祓い暮らしを守る働き

学業成就や試験合格は、神話で発揮した思慮の深さにあやかる祈願です。戸隠神社中社では、受験や学びとともに商売繁盛も祈られています。

開運・厄除・家内安全も、戸隠神社中社が伝えるご神徳です。難局を乗り越える知恵や、災いを祓い生活を守る働きに願いを託します。気象神社では晴天祈願を受け付け、学問と気象の両方に関わる「気象予報士合格守り」も授与されています。

天八意思兼命オモイカネの家系図・関係する神々

『古事記』では、天八意思兼命オモイカネにあたる思金神オモイカネは高御産巣日神タカミムスヒの子とされます。万幡豊秋津師比売命ヨロズハタトヨアキツシヒメも同じ父神の子です。『先代旧事本紀』には、思兼神オモイカネの子にあたる二柱の名も記されています。

関係 神名・説明
父(親神) 高御産巣日神タカミムスヒ。天照大御神アマテラスとともに、地上へ派遣する神について相談する神です。
兄弟姉妹 万幡豊秋津師比売命ヨロズハタトヨアキツシヒメ。『古事記』では、ともに高御産巣日神タカミムスヒの子とされます。
子 天表春命アメノウワハル、天下春命アメノシタハル。『先代旧事本紀』では、表春命ウワハルは信濃の阿智祝部、下春命シタハルは武蔵の秩父国造の祖とされます。

阿智祝部は、信濃の阿智で神に仕える氏族です。天表春命アメノウワハルは戸隠神社宝光社の祭神でもあり、同社でも中社に祀られる天八意思兼命オモイカネの子神と伝えられています。秩父の知知夫彦命チチブヒコは天八意思兼命オモイカネの十世の子孫とされ、直接の子である天下春命アメノシタハルとは世代が異なります。

『古事記』には、思金神オモイカネの母や妻の名は記されていません。現在、横浜の思金神社が紹介する由緒では、思金大神オモイカネと下照姫神シタテルヒメを夫婦としています。これは同社が伝える結婚の物語で、『古事記』の系譜とは異なる伝承です。

天八意思兼命オモイカネの神話・伝承

天岩戸開きは、姿を隠した天照大御神アマテラスを、神々が力を合わせて外へ迎える物語です。ここでは、思金神オモイカネが手立てを考え、鏡や舞、祈りを用意する『古事記』の話をたどります。

閉じた岩戸の向こうへ届く笑い

以下は、原典で確認できる出来事をもとに、現代の読み物として意訳・再構成しています。原文の逐語訳ではありません。

川の音ばかりが、暗闇の中で妙にはっきり聞こえた。天安河原に集まった神々の声は重なり合い、誰の言葉も最後まで届かない。思金神オモイカネは、見えない対岸をじっと見つめていた。

天照大御神アマテラスが岩屋に籠もってから、高天原にも地上にも光がない。須佐之男命スサノオが皮を剥いだ馬を機織りの御殿へ投げ込み、驚いた織女は、糸を通す道具で陰部を突いて死んだ。それを恐れた大神は固く戸を閉ざし、闇の中には次々と災いが起こった。神々の焦りが河原を覆っている。

「どうすれば、お戻りいただける」

その問いを受けて、思金神オモイカネは目を伏せた。戸の向こうにいる相手のことを考えると、声を張り上げるだけでは足りない気がした。岩屋の外へ心が動くような、何かを用意しなければならない。

「長く鳴く鳥を集めよう。それから、鏡と玉を」

言葉にすると、頭の中に散らばっていた手立てがつながっていった。常世の長鳴鳥が集められ、闇を突き抜ける声を上げる。川上の堅い石と山の鉄が運ばれ、神々の手が忙しく動き始めた。

鍛冶を担う天津麻羅アマツマラが求められ、伊斯許理度売命イシコリドメは鏡を作り、玉祖命タマノオヤは長い玉飾りを作った。天児屋命アメノコヤネと布刀玉命フトダマは鹿の肩骨と木を用いて占い、根ごと掘り取った榊に玉と鏡、幣を取り付けていく。思金神オモイカネは、一つずつ形になっていく品に視線を移し、胸の奥のざわつきを押さえた。

岩屋の前で、布刀玉命フトダマが飾られた榊を捧げ、天児屋命アメノコヤネの祈りの言葉が響いた。天手力男神アメノタヂカラオは戸の脇に身を隠し、じっと時を待っている。誰もが自分の役目についたのに、戸はまだ動かなかった。

そこへ天宇受売命アメノウズメが進み出た。蔓をたすきにし、髪を飾り、笹の葉を手にした姿が、伏せた桶の上へ軽く跳ぶ。足を踏み鳴らす音が、岩屋の前で腹に響いた。

どん、どん、と音が重なり、舞は激しさを増していく。神がかった天宇受売命アメノウズメは胸をあらわにし、裳の紐を陰部まで押し下げた。こわばっていた神々の顔が崩れ、たちまち高天原を揺らすほどの笑い声が広がった。

思金神オモイカネの耳に、石がこすれる音が届いた。戸に細い隙間ができている。息を止めたまま見つめるその向こうから、天照大御神アマテラスの声がした。

「私が隠れて、外は暗いはずなのに。どうして皆、そんなに笑っているの」

天宇受売命アメノウズメは舞の勢いを失わず、明るく答えた。「あなたよりも尊い神がおられるから、喜んでいるのです」。その間に、天児屋命アメノコヤネと布刀玉命フトダマが鏡を差し出した。

天照大御神アマテラスが、その鏡へ目を凝らす。もう少し、もう少しと、大神の体が戸の外へ出てくる。思金神オモイカネの指に、知らず知らず力が入った。

その瞬間、天手力男神アメノタヂカラオが動いた。差し伸べられた手が大神の手を取り、岩屋の外へ引き出す。すかさず布刀玉命フトダマが背後に縄を渡し、「ここから内へは、もうお戻りになれません」と告げた。

光があふれた。闇の中で声だけだった神々の顔も、榊の葉も、川の流れも、はっきりと見える。思金神オモイカネはようやく指をほどき、明るさに目を細めながら、長く息を吐いた。

天八意思兼命オモイカネゆかりの神社|東京・関西で祀られている神社も紹介

天八意思兼命オモイカネの信仰は、神話ゆかりの戸隠や、氏族の祖神を祀る秩父に受け継がれています。東京では気象の祈願、関西では知恵や学問の信仰と結びつく神社があります。同じ神様でも、土地の歴史や祭りにそれぞれの特色が見られます。

戸隠神社中社|岩戸神楽と父子の対面を伝える社

長野県長野市の戸隠神社中社は、天八意思兼命オモイカネを祀る社です。戸隠山の麓にある五社の一つで、岩戸を開くきっかけとなる岩戸神楽を考案した神と伝えています。

戸隠では、山の信仰に天台密教や修験道が重なり、神と仏をともに祀る顕光寺が栄えました。中院の思兼神オモイカネは釈迦シャカと結びつけられていましたが、明治初年の神仏分離を経て神社として歩むようになりました。現在の社殿には河鍋暁斎の「龍の天井絵」を復元した絵があり、境内には大きな三本杉が立っています。

丑年と未年の六年ごとに営まれる式年大祭では、子神の天表春命アメノウワハルを祀る宝光社から中社へ神輿が進みます。父と子の神が対面する神事で、二つの社のつながりを今に伝えています。

⇒戸隠神社公式サイトはこちら

秩父神社|秩父を治めた一族の祖神

埼玉県秩父市の秩父神社は、八意思兼命ヤゴコロオモイカネを四柱の祭神の一柱として祀る社です。創建の伝承では、秩父を治める国造に任じられた知知夫彦命チチブヒコが、祖神である八意思兼命ヤゴコロオモイカネを祀ったことに始まるとされます。

古くから秩父地方の総鎮守として信仰され、中世には星を神聖視する妙見信仰と結びつき、秩父妙見宮と呼ばれました。現在の祭神には、鎌倉時代に北辰妙見ホクシンミョウケンとして合祀された天之御中主神アメノミナカヌシも含まれています。現在の社殿は、戦国時代の焼失を経て、天正20年(1592年)に徳川家康の寄進で再建されたものです。

毎年12月3日の例祭は秩父夜祭として知られます。笠鉾や屋台が曳かれる夜には、祭神が神社を出て、祭りの目的地である御旅所へ向かう神幸祭が行われます。かつて旧暦11月3日に営まれていた祭りは、明治の改暦後に現在の日付へ移りました。

⇒秩父神社公式サイトはこちら

気象神社|東京・高円寺で天気を祈る

東京都杉並区の高円寺氷川神社境内にある気象神社は、八意思兼命ヤゴコロオモイカネを祀っています。天気に関わる祈願で親しまれ、晴天を願う下駄の形の絵馬が授与されています。

昭和19年(1944年)に陸軍気象部の構内に造営され、予報の的中を祈る気象観測員の心のよりどころとなりました。戦後に高円寺氷川神社へ移され、平成15年(2003年)には老朽化した社殿が再建されています。

例大祭の気象祭は、気象記念日と同じ6月1日です。気象記念日は、明治8年(1875年)のこの日に東京気象台が開設されたことにちなみます。その日に営まれる祭りでは、八意思兼命ヤゴコロオモイカネの恵みに感謝を捧げます。

⇒気象神社公式サイトはこちら

天八意思兼命オモイカネが祀られている主な神社

関西では、大阪府箕面市の五字神社と、京都市東山区の地主神社でも信仰が受け継がれています。粟生外院の五字神社は八意思兼命ヤゴコロオモイカネを祀り、安永6年(1777年)に帝釈寺の境内から現在地へ移された社です。地主神社では、思兼大神オモイカネを知恵・学問・受験の神として、主祭神と同じ社殿の相殿に祀っています。

神社名 住所
五字神社(粟生外院) 大阪府箕面市
地主神社 京都府京都市東山区
阿智神社 長野県下伊那郡阿智村
思金神社 神奈川県横浜市栄区

阿智神社は、天思兼命アメノオモイカネが阿智の地へ降ったと伝える社で、前宮と奥宮があります。横浜の思金神社では八意思金大神ヤゴコロオモイカネの名で祀られています。

地主神社は、2026年10月3日現在、建造物・境内整備工事のため閉門中で、開門時期は未定です。参拝を計画する際は、公式サイトの最新案内をご確認ください。

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